壊れたピアノから史上最も売れたアルバムができた話〜ティム・ハワードのTEDトークより

今回はTEDトークから「障害こそが人をクリエイティブにさせる」という話を取り上げます。スピーカーは、経済学者でありコラムニストでもあるティム・ハワードさんです。

ハワードさんは、まず最初に「ザ・ケルン・コンサート」の話を持ち出します。「ザ・ケルン・コンサート」とは、史上最も売れたソロピアノのアルバムのことです。

1975年の1月、ケルンのオペラハウスに演奏者のキース・ジャレットがやってきます。彼の目的は、もちろんピアノを演奏することです。この日はコンサートが行われる予定でした。

しかし、当日になってトラブルが発生します。手違いによって、問題のあるピアノが会場に用意されてしまったのです。そのピアノは高音域が耳障りで、音量も小さく、黒鍵は引っかかり、白鍵は音程がずれていて、おまけにペダルも壊れていました。こんなピアノでは演奏できないと、キースは帰ろうとします。

プロモーターの女性はなんとか新しいピアノを手配しようとしましたが、それは叶いませんでした。雨の中、彼女は車中にいるキースに向かって「どうかコンサートを中止しないで」と懇願しました。

ずぶ濡れになりながらも必死にお願いする彼女を哀れに思ったキースは、一転して演奏を引き受けることにします。

そして数時間後、半分壊れたピアノで演奏が始まりました。

すぐに奇跡が起こっていることが明らかになりました。キースはピアノの中音域だけを使いながら心地よい音を奏でたのです。さらに音量の小ささをカバーするために、立ち上がって鍵盤に叩きつけるようにして演奏しました。

その結果、コンサートはこれまでにない独特なものになりました。この演奏「ザ・ケルン・コンサート」は人々に愛され、ソロピアノとして史上最も売れたアルバムになります。キース・ジャレットは見事にピンチをチャンスに変えてしまったのです。

このあと、ティム・ハワードさんはさらにいくつかのエピソードを紹介しますが、伝えたいメッセージはどれも共通しています。それは要するに「障害があるからこそ、人はクリエイティブになれる」ということです。

大抵の場合、人は障害が発生すると「もう駄目だ」とあきらめてしまいます。実際、キース・ジャレットも一度はあきらめかけました。しかし、そこで立ち止まり、なんとかして障害を克服しようと粘ったからこそ、新しい道が開けたのです。

同様に、あなたの前に問題が現れたときも、「なんとか克服することはできないだろうか」と考えてみましょう。すぐにあきらめてしまわず、忍耐強く取り組んでいけば、思わぬ創造性が発揮できるかもしれません。

最後に、ハワードさんはこう言います。「私たちは皆、時には使い物にならないピアノの前に座り、弾いてみることも必要なのです」──。

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