ドラクエの生みの親から学ぶ②──常に驚かせることを考える

前回は堀井雄二さんのインタビューを取り上げ、「マニュアルを見なくてもわかるようにする」ということを学びました。

そこで今度は、同じく堀井さんのインタビューから、「常に驚かせることを考える」という点を見ていきたいと思います。

インタビューが掲載された媒体は、前回と同じく「電ファミニコゲーマー」からです。

参考

【堀井雄二インタビュー】「勇者とは、諦めない人」――ドラクエが挑んだ日本人への“RPG普及大作戦”。生みの親が語る歴代シリーズ制作秘話、そして新作成功のヒミツ電ファミニコゲーマー

堀井氏:「ビックリさせたい」というのは常にあります。イタズラ心があるんですよ、仕掛けてやりたいという。これはゲーム作りの楽しさでもあるんです。

――実は「星新一のショートショート」のような、ひねりの利いたどんでん返しを繰り出す才能は、物語作家・堀井雄二を語る上で欠かせないと思います。しかも、よく言われるように『ドラクエIII』で、堀井さんたちの日本人向け「RPG啓蒙大作戦」が一段落して、もう『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(以下、『ドラクエIV』)【※】からはどんどん新しい要素が入ると同時に、ストーリーも驚きと複雑さを増していきました。

当時、『ドラクエIII』で堀井さんは「やりたかったことを全てやり終えた感がありました」そうです。しかし、シリーズの人気から続編を制作することになり、次はどうしようかと悩みます。

そこで思いついたのが、「仲間のキャラクターにもそれぞれの人生があるはずだ」ということ。そして、それぞれ個性があるのなら、主人公の命令をそのまま聞くはずがない──。その結果、『ドラクエIV』は章立てのストーリーになり、戦闘では仲間はAIで動くというかたちになりました。

――『ドラクエIV』でAIを入れた理由は、「思うように動いてくれないようにするため」だった(笑)。

堀井氏:あえて『ドラクエIV』では「めいれいさせろ」を入れなかったですからね。まあ、おかげでクリフト【※1】が「ザラキ」【※2】ばかり唱えることになっちゃったけど、そういうのも「人間くささ」じゃないですか? ただその反省もあって、次からはAIに先入観をつけるようにしました。つまり、ザラキはまず効かないだろうという先入観です。で、たまたま唱えてみて、そのモンスターに効いたら、それを覚えておいて次からは唱えやすくなるという。

その次の『ドラクエⅤ』では、プレイヤーに真剣に悩んでもらうことを仕掛けます。では、どうすれば真剣に悩んでもらえるのか? 堀井さんが導き出した答えは「結婚」でした。

堀井氏:『ドラクエIV』を終えて、また『ドラクエV』は何を売りにしようかと悩みました。で、じゃあいっそ「ゲームで真剣に悩む」ことをプレイヤーにしてもらおうかな、と。

 それが結婚でした。これは、やっぱり驚きますよね。

――そりゃもう(笑)。
堀井氏:
ルドマン【※】も、ユーザーが話しかけるだろうと思ってちゃんと仕込んでおくと、ああいう風に驚いてくれますしね。

そして魔王を倒すのもいっそ三代かかるものにしてしまえ、と。ただ、既存の作品で同様のプロットのものは、キャラクターがどんどん入れ替わって戦うだけなんです。それではつまらないから、もういっそ主人公が子どもから大人になって、さらに親になって、自分の子どもと一緒に敵を倒すという物語にしてしまいました。

そして、その後の『ドラクエⅥ』では当時の世相を反映させてみたり、次の『ドラクエⅦ』では「マップを集める」というストーリーにしたりと、作品ごとにさまざまな仕掛けを取り入れています。

前回の記事では、ドラクエシリーズが支持されている理由のひとつに「マニュアルを見なくてもわかる仕組み」を挙げました。これはシステム面の話です。一方、ストーリー面では、プレイヤーをびっくりさせようと常に新しいなにかを模索しています。

堀井さんのこの姿勢こそが、長年ドラクエを支えている原動力なのは疑いようがないでしょう。

常に新しい驚きを。これこそがクリエイターに求められている能力なのです。

ドラクエの生みの親から学ぶ──アプリやゲームは、マニュアルを見なくてもわかるように

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